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知的財産を侵害する記事の削除・特定

  • 執筆者:弁護士柴田佳佑

知的財産権侵害も削除や特定の対象

プロバイダ責任制限法では,「権利が侵害されている」場合に削除・開示ができるとされています。名誉毀損やプライバシーだけでなく,知的財産権を侵害するようなインターネット上の記事や写真の掲載も,「権利が侵害されている」場合に当たります。

今回は,著作権侵害・商標権侵害を理由に削除や発信者情報開示をプロバイダに求める場合,どのような資料を添えて請求する必要があるか,それに対しプロバイダがどのように反応すると予想されるかを,プロバイダ責任制限法ガイドライン等検討協議会が公開しているガイドラインを参考にご説明いたします。

弁護士へのご相談やご依頼をお考えの方も,用意する資料や,削除や特定の対象となるかの参考にしていただければ幸いです。

著作権侵害の場合

著作権侵害による削除や開示を求めるには

著作権侵害というためには大まかにいえば,①著作権を有していること,➁投稿が①の著作権を侵害していること,が必要になります。

そこで,①➁の資料を添えてプロバイダに請求することとなります。

①著作権を有していることの資料

 著作権が登録されている場合にはその資料を用いることができますが,されていない場合は他に著作権を有していることを示す資料を提出する必要があります。

 プロバイダ責任制限法ガイドライン等検討協議会のガイドラインでは,次のようなものが挙げられています[1] 。

  1. 著作物等に関して著作権法に根拠のある登録(海外におけるものを含む。)がされている場合には、当該登録が行われていることを証する書面
  2. 著作物等の発行・販売等に当たって著作権者等の氏名等が表示されている場合は、その写し(著作権法14条、ベルヌ条約15条、万国著作権条約3条1項参照)
  3. 申出がなされる以前に一般に提供されている商品、カタログ等であって申出者が著作権者であることを示す資料がある場合は、当該資料又はその写し
  4. 著作物等と著作権者等との関係を照会できるデータベースであって、適切に管理されているものが提供されている場合には、当該データベースに登録されていることを証する書面
  5. 原作者と二次的著作物の著作者との間で交わされた翻案及び権利関係に関する契約書、確認書等の文書のうち権利関係の確認に必要な部分など、申出者が二次的著作物に対する原著作者であることを証する書面

➁投稿が①の著作権を侵害していることの資料

著作権侵害がされていることの分かる資料を添えます。

例えば,ホームページのブログで著作物のいわゆる丸写しがされているような場合でしたら,そのブログのURLを伝えるとともに,該当ページを印刷した紙を添えたりします。

商標権侵害の場合

著作権侵害による削除や開示を求めるには

 商標権侵害も大まかには,①商標権を有していること,➁投稿が①の商標権を侵害していること,になります。

①商標権を有していることの資料

 商標は登録されますので,商標原簿,特許情報プラットフォーム[2]にある商標の情報の印刷等を資料にすることができます[3]。

➁投稿が①の商標権を侵害していることの資料

著作権侵害の場合と同じように,侵害がされていることの分かる資料を添えます。

例えば,ホームページ上で商標を用いて営業活動がされているような場合でしたら,そのブログのURLを伝えるとともに,該当ページを印刷した紙を添えたりします。

予想されるプロバイダの対応

知的財産権の侵害があったと申し出ても,権利侵害があるか否かはプロバイダが判断し,必ずしも削除や開示に応じてくれるとは限りません。

 なお,ガイドラインでは,次のような点を判断要素としています。

著作権侵害

1 ①著作権を有していること

 著作権者であることを確認できることが必要とされているところ,著作権侵害の場合2で記載したような資料が証拠として提示される必要があるとされています。

2 ➁投稿が①の著作権を侵害していること

 ガイドラインでは以下のような次のような場合が挙げられています。

(1) 著作権等侵害であることが容易に判断できる態様

a)情報の発信者が著作権等侵害であることを自認しているもの

b)著作物等の全部又は一部を丸写ししたファイル( a)以外のものであって、著作物等と侵害情報とを比較することが容易にできるもの)

c)b)を現在の標準的な圧縮方式(可逆的なもの)により圧縮したもの

(2) 一定の技術を利用すること、個別に視聴等して著作物等と比較すること等の手間をかけることにより、著作権等侵害であることが判断できる態様

a)著作物等の全部又は一部を丸写ししたファイル((1)a)、b)以外のものであって、著作物等と侵害情報とを視聴して比較することや、専門的方法を用いて比較することで確認が可能なもの)

b)(1)b)又は a)を圧縮したものであって、(1)c)に該当するものを除いたもの

c)a)又は b)が分割されているもの

商標権侵害

1 ①商標権を有していること

商標権者であることを確認できることが必要とされているところ,商標権侵害の場合2で記載したような資料が証拠として提示される必要があるとされています。

2 ➁投稿が①の商標権を侵害していること

 ガイドラインでは偽ブランド品の場合の判断要素を挙げていますが,それ以外の場合にも侵害は起こりえます。

 商標権侵害になっているか否かは,①指定商品または指定役務が同一か類似したものに,➁同一または類似の商標を使用しているか,が判断基準といわれていますが,これらを満たしているか個別具体的に判断されると思われます。

プロバイダが削除や開示に対応してくれない場合

 ここで記載した事項は知的財産権侵害での削除・開示に必要なものすべてではなく,プロバイダから説明や追加資料提出を求められることがあります。

 また,プロバイダ責任制限法では,権利侵害を認める相当な理由があるときでなければ,削除や開示に応じなくても責任を負わないとされています。そのため,知的財産侵害があったと確信できなければ(例えば,これまでお話ししたような点で疑問が残れば)削除や開示には一切応じないという態度のプロバイダも数多く存在します。

プロバイダが削除や開示を拒否した場合は,裁判手続をとって,裁判所から削除の判決や命令を出してもらう必要があります。

 

[1] http://www2.telesa.or.jp/consortium/provider/pdf/provider_031111_1.pdf

http://www.telesa.or.jp/ftp-content/consortium/provider/pdf/provider_hguideline_20160222.pdf

[2] https://www.j-platpat.inpit.go.jp/web/all/top/BTmTopPage

[3] http://www2.telesa.or.jp/consortium/provider/pdf/trademark_guideline_050721.pdf

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