風評被害対策

自分の書込みなら削除できるのか?-1

  • 執筆者:弁護士中澤 佑一

 当事務所では、インターネット上での誹謗中傷・風評被害対策としての、書き込み等の削除請求・発信者情報開示請求にも力を入れて取り組んでおります。この問題に積極的に取り組む弁護士はまだそれほど多くはないため当事務所にも遠方のお客様を含め多くのご相談をいただいております。その中で、意外に多いのが、

「自分が書き込んでしまった投稿を削除したい」

と いう書込みを行ったご本人からのご相談です。

 一見、自分の書き込みを消すことはむしろ簡単なような気がするかもしれませんが、実はなかなか対応が難しいケースも多いのです。今回は自分の書込みの削除を求める場合に生じる問題点についてまとめさせていただきます。

※ 私以外の弁護士の中には自分の書き込みでも問題なく削除できる法的なノウハウを有している方がいらっしゃるかもしれません。あくまで私個人が(不勉強ゆえの点も含めて)現在感じている問題点としてお読みください。

1 誹謗中傷をうけた場合と同じ理屈が使えない

(1)通常の場合の削除請求の法的構成

権利侵害に対する差止請求、若しくは現になされている権利侵害行為に対する妨害排除請求という構成になります。

 削除請求を差止請求と構成するのは違和感があるところかもしれませんが、ウェブページというものの実体を考えた場合、ある意味実体に沿っています。ウェブページの場合、サーバー上では日々刻々と来るアクセスに対して、その都度情報を発信しておりますので、情報の削除とはすなわち、これ以後は特定の情報の発信は行わないようにと、その情報発信を差し止める形になるのです。

 差止請求権の根拠付けとしては、侵害されている権利が著作権の場合など、法律の条文に明文で差止請求権が規定されているものについてはその条文、それ以外の人格権侵害(名誉棄損など)の場合などの場合には条理上の請求権です。

 以上のような法律構成によって情報の削除を請求する場合、削除請求の要件は以下のようになります。

   ① 情報の発信によって何らかの権利が侵害されている場合に

   ②  その侵害されている権利を行使しうる者から

   ③ 現にその権利を侵害している者(かつ、権利侵害を是正しうる者)に対して、行うこと

(2) 権利者=被害者

  このように、被害者側で書き込みの削除を請求する場合には、侵害されている権利に基づいて行うことになりますので、請求をなしうるのは権利侵害を受けている被害者のみということになります。

 自分の書き込みを消したいという時には、当然自分に対する権利侵害はありませんから、この法的構成は使えないのです。

2 発信者であることに基づいて削除は可能か?

 ネット以外の出版等の通常の表現行為であれば、自分の表現であることを根拠に差止等を行うことができる場合も多いですが、ネットの場合はなかなか問題が多いのが現状です。

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