労務管理

元従業員からの投稿であることを特定するとともに労務環境を改善したケース

  • 執筆者:弁護士松本 紘明

転職口コミサイトにネガティブな口コミがあり求人募集を出しても応募がありません!

地方で製造業を営むA社さんから相談です。

転職口コミサイトにネガティブな投稿がなされました。ちょうど求人を出したタイミングでの口コミ投稿だったこともあり、応募が全くない状況に頭を悩ませてしまいましたがどのように対処すればよいのかわかりません。

当事務所が相談をお受けしたところ、口コミが投稿されてから日数もそれほど経過しておらず、またサイト管理者に削除請求を行ったり、目星をつけた投稿者と交渉を開始したりしていることもなかったことから、取り得る方法に制限はなく最善の方法をご提案差し上げることができました。

転職口コミサイトへの削除・特定請求、特定後の示談交渉

転職口コミサイトにネガティブな投稿がなされた場合、サイトの利用規約に投稿を削除する基準が明記されているケースもあり、ご相談者ご自身がそれら理由に基づいてサイト管理者に削除請求をなされているケースがあります。

サイトによっては削除請求に対応してくれるものの問題箇所のみ削除するだけで全体は削除しないケースや投稿者を特定するための情報が削除請求によって消去されてしまっているケースがあります。どのような結果を目指すのかによっては注意を要することがあります。

A社さんのケースでは会社の労務環境や経営者の人柄に関する言及がなされていましたが、事実に反する内容であったり、表現方法がいきすぎたものであったりしたことから削除請求及び特定請求がいずれも管理者に認められました。

その後、プロバイダからも契約者の情報を取得することができ、投稿者は元従業員であることが判明しました。

投稿者に損害賠償請求を行うとともに二度と同様のことを行わないことを誓約するよう要求したところ、投稿者も反省した様子で合意書を取り交わすことができました。

最近では口コミを投稿することを条件にほかの人の口コミを閲覧できるシステムをとっている転職口コミサイトも存在することから安易な口コミが増加しているのかもしれません。

転職口コミサイトへの投稿は労務環境改善の契機

当初、A社さんは投稿された内容に怒り心頭でしたが、手続きがすすむうちに冷静になられたこともあり、今回の口コミを契機に労働環境を整備することを検討され始めました。従業員が数名の会社でしたので就業規則の作成義務はなかったのですが、会社の憲法とも呼べる就業規則を作成し、従業員に周知することで会社のルールを以前よりも明確化することができました。また、待遇面も賃金規程を作成することで昇進や昇給の仕組みを従業員と共有することができ生産性がアップしたとのことです。

転職サイトの口コミは経営者にとってみれば頭の痛い話が多いですし、必ずしも納得しての退職ではないケースもあり表現が過大になるケースもあります。経営者としてこのような口コミに真正面から取り合うことは心理的にも負担がかかります。

しかしながら、現従業員からは聞くことのできない示唆に富む意見が含まれていることも事実であり、これに耳を傾ければ会社の成長に役立てることができることもあります。A社さんのケースでは就業規則等の作成・周知を行うことになりましたが、その他にも労働時間の削減に向けた取り組みや労働環境のハード面や福利厚生の充実など取り得る方法を様々です。

さらに、A社さんはご相談前は会社の公式ホームページなどもなく会社名を検索すると検索結果の上位には転職口コミサイトで占められていたところ、公式ホームページを開設するとともにSNSの運用を開始し、積極的に会社のよいところを発信することにしました。その結果、求人応募を検討している方や取引先にもアピールすることができるようになりました。

事実に反する誹謗中傷などは毅然とした対処が必要ですが、口コミをきっかけに労務環境の整備などをご検討されるのもよい機会かと思います。当事務所ではこのようなお手伝いまでトータルパッケージでご提案差し上げています。

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