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仮処分or訴訟? 削除裁判を行う場合の手続選択の考え方

  • 執筆者:弁護士松本 紘明

原則は仮処分が最適

削除請求を行う場合、通常の訴訟手続ではなく民事保全法の仮処分手続を利用する方が迅速です。

しかしながら、仮処分手続はあくまで「仮」の手続ですので、仮処分手続において、削除請求を認める判断が裁判所で下されたとしても、管理者が訴訟手続によって争うことは可能です(起訴命令の申立て)。現に削除を認める仮処分決定後、起訴命令の申立てがなされるケースも稀にあります。

もっとも、多くのケースではサイト管理者はこちらの手続をとることまでは行わないため、事実上、仮処分手続によっても満足を得られる結果となっています。。

削除訴訟を選択した方がいいケース 訴訟のメリット

上記の通り、削除請求を行う場合には、手続きが迅速勘弁な仮処分手続を用いることが一般的です。ただ、以下のようなケースでは通常の訴訟手続を行うこともあります。

保全の必要性が認められないケース

最近、裁判所は以前に比べ保全の必要性を指摘することが多くなりました。投稿が行われてから長期間が経過しているケースでは保全の必要性がないとして却下心証をもつケースもあるようです。

起訴命令の申立てが考えられるケース

仮処分で決定を得たとしても、投稿者が判断に従わないことが明らかなケースがあります。このような場合には仮処分手続ではなく、訴訟手続を初めから選択することもあります。

損害賠償請求を一緒に行うケース

訴訟手続では削除請求と一緒に損害賠償請求を行うことも可能です。もっとも、プロバイダ責任制限法によってプロバイダには免責が広く認められていますのでこちらの要件の検討は必須になります。

発信者の住所氏名の開示請求を併せて行うケース

事前に登録をしてから書き込みをするサイトなど、ウェブサイト管理者が発信者の住所氏名等を把握している場合があります(amazonなど)。
この場合、記事の削除の裁判と一緒に住所氏名の開示請求を行えば、1回の裁判で削除と投稿者特定が完了できます。
住所氏名の開示請求については、現在のところ仮処分では認められておらず訴訟が必須となりますので、この場合も訴訟を選択するメリットがあるケースです。

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