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ネットいじめの対応方法

  • 執筆者:弁護士松本 紘明

ネットいじめ(SNSいじめ)が増加中

これまでいじめといえば、仲間はずれ、暴力や暴言をふるうなどが典型的なケースでしたが、最近はSNSを使ったいじめが増加しています。SNSで特定の生徒の悪口を言ったり、根も葉もない噂を流したりするケースが典型例です。

そして、非常に残念なことですが、ネットいじめが原因の自殺報道がなされることももはや珍しくありません。

ネットいじめの場合、被害発生時点では加害者が誰だか分かりません。このような場合はどうすることもできないのでしょうか。

学校の先生や友人は、気にしすぎ、そんなに気になるならインターネットを見なければいい、などのアドバイスをすることもありますが、果たしてそうなのでしょうか。

加害者の行為によっていじめ被害者の行動が制限されてしまうとすれば非常に残念です。

今回はネットいじめの被害に遭ってしまった場合、どのような対処が可能か事例とともにご紹介したいと思います。

いじめも刑法に抵触

一般的に、学校内で起こった問題は「いじめ」の一言で表現されてしまっています。

しかし、暴力をふるって怪我をさせれば傷害罪ですし、インターネットで悪口や根も葉もない噂を流せば名誉毀損罪や侮辱罪に該当する可能性があり、「いじめ」の一言で済ませられないケースも存在します。

学校生活をおくるうえで乗り越えなければならない人間関係もあるかもしれませんが、一線を越えた言動には然るべき対処が必要です。

ネットいじめの犯人を特定することは可能

表面的にはネットいじめは誰が行っているのか分かりませんが、インターネットの接続履歴をたどる発信者情報開示請求権を行使することで犯人を突き止めることは法的に可能です。

いじめをめぐる環境整備~いじめ防止対策推進法

いじめ防止対策推進法においてもインターネットを用いたネットいじめへの対策は意識されています。

具体的には、インターネットを通じて行われるいじめに対する対策の推進として、

【いじめ防止対策推進法】
第十九条 学校の設置者及びその設置する学校は、当該学校に在籍する児童等及びその保護者が、発信された情報の高度の流通性、発信者の匿名性その他のインターネットを通じて送信される情報の特性を踏まえて、インターネットを通じて行われるいじめを防止し、及び効果的に対処することができるよう、これらの者に対し、必要な啓発活動を行うものとする。
2 国及び地方公共団体は、児童等がインターネットを通じて行われるいじめに巻き込まれていないかどうかを監視する関係機関又は関係団体の取組を支援するとともに、インターネットを通じて行われるいじめに関する事案に対処する体制の整備に努めるものとする。
3 インターネットを通じていじめが行われた場合において、当該いじめを受けた児童等又はその保護者は、当該いじめに係る情報の削除を求め、又は発信者情報(特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(平成十三年法律第百三十七号)第四条第一項に規定する発信者情報をいう。)の開示を請求しようとするときは、必要に応じ、法務局又は地方法務局の協力を求めることができる。

と規定されています。

学校や学校の設置者にはインターネットを通じて行われるいじめを防止し効果的に対処することができるよう義務が課せられています。

もっとも、実際にいじめ被害に遭っている児童や生徒、その保護者は削除請求や投稿者の特定請求を行う場合に法務局又は地方法務局の協力を求めることができると定められているだけで特別な手段が設けられているわけではありません。そもそも、法務局に協力を求めることはこのような法律がなくともできますし、法務局に協力を求めることで削除請求を行うことはできても、投稿者の特定を実現することは極めて困難です。それどころか、削除請求を先行させてしまうことで貴重な証拠が失われてしまう可能性すらあります。

また、いじめ問題を外部に漏らしてはいけまいともみ消し工作等に躍起になっている教師や学校などは論外ですが、大多数の教師や学校はいじめ被害を訴えている生徒や児童を何とか従前どおりの状況に戻してあげたいと考える結果、何とか学校内で解決を図ろうと考えます。しかし、このような対応によって、かえって外部の機関に相談する機会を逸している可能性もありますので学校関係者のみに解決策を委ねてしまうことで問題が長期化するおそれがあります。

そこで、学校に相談しても具体的なアクションをとってくれない、教育委員会や警察に相談しても対処できないと言われた場合には弁護士に相談されることをお勧めします。

前述の通り、いじめは刑法にも抵触する行為ですので、一線を越えたと判断した場合には早期に捜査機関に相談を行うべきケースが存在します。特にネットいじめはインターネット上の情報の保存期間には限りがあり、証拠保全も急がなければなりません。捨てアカウントと呼ばれるような使い捨てのアカウントであれば尚更情報が失われる可能性も高いです。ネットいじめを発見した際には該当箇所を印刷したりスクリーンショットをとったりする方法で証拠を保全してください。具体的な方法が分からない場合には証拠の保全方法から弁護士にご相談されて問題ありません。

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