知的財産

建築物の広告又は商用利用(著作権について)

  •    
  • 執筆者:弁護士椿良和
  •   

東京タワーや国立競技場などの建築物を自社の広告又は商用に利用したいのですが、
著作権について、どのような点に気をつければよいでしょうか?

今回は、建築物の自社の広告又は商用に利用について、
わかりやすく説明します。

1 著作権で気をつけること

⑴ 美術の著作物に当たらない建築物の場合

美術の著作物に当たらない建築物(一般住宅の他に、建築の著作物を含みます。)については、それを写真で撮影すること、撮影した画像を広告・放送・インターネット配信に利用すること、建築物のミニチュアのおもちゃを複製して販売すること、建築物のミニチュア構造物を作成して広告目的で一時的に広場に設置することなどは、著作権法上、原則自由にできます。

ただし、東京タワーのHPには、「ライセンス/撮影・取材について」という箇所があり、そこには、東京タワーの名称、ロゴマーク、外観的形象(形状・色彩・写真・デザイン等)、キャラクターを商品やサービスの企画・製造・販売に利用する場合には、株式会社TOKYO TOWERの承諾が必要と記載されていますので、注意が必要です。

また、敷地内での撮影・取材も株式会社TOKYO TOWERの許可が必要となっています。
(参照URL)
https://www.tokyotower.co.jp/license/

⑵ 美術の著作物に当たる建築物

一方で、美術の著作物に当たる建築物は、それが「屋外の場所に恒常的に設置されている」場合には、そのカレンダー、ポスターなどの複製物を製造販売することはできません。

例えば、「太陽の塔」のミニチュアのおもちゃを製造販売すると著作権(複製権、頒布権)侵害となり得ますので注意が必要です。

⑶ 他人が撮影した写真を利用する場合

他人の写真を無断で使用する場合、当該写真が著作物に当たる場合には、著作権侵害が問題となりますが、当該写真が著作物に当たらない場合でも、紛争になる可能性があります。

一方で、ある写真家のウェブサイトを見て、建築物の写真が掲載されていたとして、その写真を気に入って、自分も同じ建築物を同じ角度などから撮影した場合、自分の撮影した写真を商用に利用した場合に、当該写真家の写真の複製権等を侵害したとして紛争になるリスクがあります。

建築家の隈研吾氏が設計に関わった国立競技場のHPをみると、そのウェブサイトは独立行政法人日本スポーツ振興センターが管理運営しているところ、同ウェブサイトに掲載されている情報は著作権保護の対象となっている旨掲載されています。

そして、国立競技場のHPには、「施設写真貸出」というタブがあるところ、そこをクリックすると、HPに掲載されている国立競技場の画像について、貸出をしている旨掲載されています。

国立競技場は、木材が多く使用され、外観的にも和な雰囲気があるところ、東京オリンピックの競技会場にもなっています。そのため、その画像を企業の広告に用いうると思われます。利用する場合には、利用の申請をし、使用料を支払い、著作権者(提供者)を示すクレジットを入れること、写真の改変の禁止など一定のルールの下で使用しなければなりません。詳細は以下をご覧下さい。
(国立競技場URL)
https://www.jpnsport.go.jp/kokuritu/tabid/426/Default.aspx

このように、著名な建築物の写真を利用する場合には、紛争を回避するためにも、まずは、そのホームページを確認する必要があります。

2 著作物の類型の検討

なお、建物について、著作権の検討をする場合には、以下のとおり、利用対象物がどの類型の著作物に当たるかを検討することになります。

⑴ 建築物が著作物に当たるか?

著作権法は、「著作物」とは、「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」と定義しています(著作権法2条1号)。

そして、著作物として、「建築の著作物」(著作権法10条1項5号)、「美術の著作物」(同項4号)、「写真の著作物」(同項8号)が例示されているところ、それぞれにつき著作物該当性を検討する必要があります。

要するに、「建築」「美術」「写真」のどの著作物に該当するかで、著作権の制限内容、つまり、当該著作物を利用してどのような行為まで許されるかが決まるため、どのような場合にそれぞれの類型の著作物に当たるかを検討します。

⑵ 建築の著作物とは?

高級注文住宅(一般住宅)の著作物性が問題となった大阪高判平成16年9月29日(平成15(ネ)3575号)において、裁判所は、「著作権法により『建築の著作物』として保護される建築物は……知的・文化的精神活動の所産であって、美的な表現における創作性、すなわち造形芸術としての美術性を有するものであることを要し、通常のありふれた建築物は、同法で保護される『建築の著作物』には当たらない」と判示しました。

そして、原告の建物につき、「客観的、外形的に見て、それが一般住宅の建築において通常加味される程度の美的創作性を上回っておらず、居住用建物としての実用性や機能性とは別に、独立して美的鑑賞の対象となり、建築家・設計者の思想又は感情といった文化的精神性を感得せしめるような造形芸術としての美術性を具備しているとはいえないから、著作権法上の『建築の著作物』に該当するということはできない」と判示しました。

この裁判例からすると、例えば、静岡県富士宮市にある「静岡県富士山世界遺産センター」は、造形芸術としての美術性を有するものとして「建築の著作物」に該当し得るといえます。
(参照URL)
https://mtfuji-whc.jp/equipment-outline/

なお、岡本太郎がデザインした「太陽の塔」については、「建築の著作物」のみならず、「美術の著作物」にも当たりうると思います。
(参照URL)
https://taiyounotou-expo70.jp/about/

ただし、上記の世界遺産センターが「美術の建築物」に当たり得るかなど「建築」と「美術」の区別がどう行われるのかが別途問題となります。

建築の範囲については、「構築物一般に及び、住宅・ビル・教会・神社仏閣等以外にも、橋梁・記念碑・タワー・墳墓等の建造物も含まれ得る」と解されており、建物に付随する塀や門、さらには、庭園、彫刻なども建築の著作物となりうるとされています(中山信弘著『著作権法[第3版]』(有斐閣、2020年)103頁~105頁参照)。

⑶ 美術の著作物とは?

「美術の著作物」とは、「形状・色彩・線・明暗で思想・感情を表現した著作物」のことをいいます(中山信弘著『著作権法[第3版]』(有斐閣、2020年)101頁参照)。

そして、著作権法10条1項4号には、「絵画、版画、彫刻」が例示として挙げられていますが、他にも、「漫画・生け花・舞台装置・書」や「商標やシンボルマーク」であっても著作物性をみたせば、「美術の著作物」となり得るとされています(中山信弘著『著作権法[第3版]』(有斐閣、2020年)101頁参照)。

⑷ 写真の著作物とは?

写真の著作物に該当するには、写真を撮った者が、その思想又は感情を創作的に表現している必要があります。

大阪地判平成15年10月30日判時1861号110頁において、裁判所は、「被写体の選定、撮影の構図、配置、光線の照射方法、撮影後の処理等」から創作性があるか否かにより、著作物に該当するか否かを判断しています。

建築物について、著作権だけでも複雑ですが、建築物を広告や商用に利用する場合には、著作権以外にも、著作者人格権、商標法、意匠法や不正競争防止法など他の法律の問題もあるため、一度、弁護士にご相談下さい。

関連記事

TOP