なりすまし・誹謗中傷
「Facebook」(フェイスブック)は、実名制を特徴とするソーシャルネットワーキングサービスです。
もっとも、厳密な身分確認があるわけではありませんので、なりすましや誹謗中傷がなされているケースもあるようです。
また、写真の無断公開やタグ付けと呼ばれる機能によるプライバシー侵害の危険性もあります。
Facebookに対する法的対処についてはこれまで前例がなかったところですが、今般、記事の削除や発信者の特定に関し、一応の法的対処方法が確立できました。そこで、Facebookにて権利侵害が発生してしまった際の法的対処方法についてまとめます。
Facebookの運営主体
Facebookを運営するアメリカ合衆国カリフォルニア州のFacebook, Inc.は株式上場もしており有名な会社ですので、Facebookはアメリカの会社が運営しているという認識が一般的かと思います。
我々も実際に裁判を提起しようとするまではそのように考えていました。
しかし、Facebookの利用規約等を細かく読み込んでゆきますと、Facebookはカリフォルニア州のFacebook, Inc.とアイルランド共和国法人のFacebook Ireland Ltd(フェイスブック アイルランド リミテッド)の2社によってサービス提供がなされていることが判明いたしました。2社に分かれているのはおそらくは税務上の問題と予想されますが、アメリカおよびカナダのユーザーに対してはFacebook, Inc.が、日本を含むそれ以外の国々のユーザーに対してはFacebook Ireland Ltdがサービスを提供しています。
よって、日本国内のユーザーに関する記事削除やアクセスログ保管については法的にはFacebook Ireland Ltdが行っており、日本から裁判を行う際には、Facebook Ireland Ltdを相手に裁判を行うことが多くなるでしょう。
Facebookを相手に裁判を行う
Facebookにも違反報告のためのウェブフォームが用意されており、なりすましや利用規約違反行為の報告を行えば一定の対応は行われているようです。もっとも、アカウントについて個人特定を行うために情報開示を求める場合については、裁判所の開示命令がなければ情報開示を得ることは事実上できません。
しかし、アイルランドのFacebook Ireland Ltdでも、カリフォルニアのFacebook, Inc.でも、日本の裁判所に裁判を申立てることは可能です。
国際裁判管轄が問題となりますので専門的な経験を要する手続ではありますが、国際民事保全手続の経験を有する弁護士であれば対応できます。
なお、渉外的な要素が絡む裁判では、仮に裁判所の命令が発令されたとしても相手が任意に応じない場合には海外での判決承認手続等が必要になりますが、Facebookは日本の弁護士を代理人として選任し日本の裁判所での訴訟活動を行う他、裁判所から正式な命令が発令されれば任意にこれに応じています。よって、海外での手続きを踏むことなく日本の裁判手続きのみで対処が可能です。
なお、Facebookに対して記事削除や情報開示を求める裁判ですと、申立てを行ってから決着まではスムーズにゆくケースではおおよそ1か月半程度です。