家族の紛争

離婚における各種保険の取り扱い

  • 執筆者:弁護士松本 紘明

離婚に際して保険はどうなるの?

学資保険や生命保険など貯蓄性のある保険が財産分与の対象とされていることは周知のとおりです。

別居日等の財産分与の基準となる時点の解約返戻金を計算しその金額に契約期間のうち婚姻期間が占める割合を乗じて計算された金額が財産分与の対象とされることが一般的です。
また、保険料を前払いしていれば基準となる時点での未経過保険料も対象とされます。

今回はこれら以外の保険について離婚時注意すべき点を取り上げたいと思います。

火災保険の取り扱い

火災保険の契約期間上限は将来的に引き下げられていく傾向ですが以前は長期の保険契約が行われていました。この場合、未経過期間に応じた
解約返戻金が少なくない場合もあります。

不動産が財産分与の対象財産とされているケースではこの火災保険の取り扱いも併せて検討しておく必要があります。
すなわち、不動産購入時、火災保険契約を行ったものの契約期間中に離婚となったような場合、火災保険契約はどうなるでしょうか。
不動産を売却して代金を分与する場合には火災保険契約の解約を忘れないようにして返戻金が無駄にならないようにすべきです(ただし、解約時期をいつにするかは慎重な判断が必要で保険契約の空白期間が生じないようにする必要はあります)。

売却とは異なり夫婦のどちらかが不動産を取得する場合には火災保険の名義人を不動産の所有者へ変更することを忘れないようにして不動産を取得したものの知らない間に火災保険に未加入状態だったということがないように気をつけてください。ただ、この場合、火災保険の解約返戻金の金額次第では同金額も財産分与の対象であると主張され契約名義変更の条件として金銭支払いが求められるケースもあるかと思います。

自動車保険の取り扱い

似たようなケースとして自動車保険についても注意が必要です。
離婚協議中、相手方が所有者である自動車を使用することもあるかと思います。

通常任意保険にも加入されていると思いますが、離婚協議中の場合には本当に任意保険に加入しているのかどうかはしっかりと把握しておく必要があります。相手方が任意保険の更新等を怠っている状況で万が一事故を起こしてしまっては一大事です。

他方で自動車名義人からみても自動車名義人ではない相手方が自動車を利用しているケースでも注意が必要です。

相手方が事故を起こせば、自分は事故を起こした当事者ではないとしても運行供用者責任といって所有者という立場に基づき賠償義務を負うこともあります。

このようなことを踏まえると自動車を相手方に利用させる場合で将来的に自動車を分与されるつもりであれば、自動車を引渡す際に自動車の名義変更と保険契約の変更手続きも行っておく方がベターです。

最後に

以上、離婚に際してはすべての保険を点検し財産分与とすべきものに漏れがないか、事故が発生した場合保険の利用ができる状況かどうかを確認しておくことが重要です。

関連記事

TOP