平成25年5月26日公職選挙法改正法が施行され、次の国政選挙以後の公職選挙からはインターネット上での選挙運動が認められるようになります。
そこで、ネット関連の法律業務を多数取り扱ってきた当事務所の立場からインターネット選挙について解説いたします。
なお、本稿ではわかりやすさを優先して要点のみ解説しております。詳細は総務省:インターネット選挙運動の解禁に関する情報などを御確認ください。
解禁されたものと、されないもの
今回の改正によって
ホームページ・ブログ・ツイッター・フェイスブック・動画サイトなど、あらゆるウェブサイトが解禁されます。
ただし、選挙におけるインターネットの利用が全面的に解禁されたわけではなく、以下のような行為は依然禁止です。
インターネットを利用した選挙運動を行う際の注意点
インターネット上での選挙運動の解禁に際して、一般の有権者の目線で注意すべきこととしては以下のような点が挙げられます。
責任ある情報発信を確保するという観点から、インターネット上で選挙運動に当たる内容を発信するには、電子メールアドレス等の連絡先の記載が必要です。
なお、ツイッターやフェイスブックでの情報発信については、メッセージ機能等により連絡が可能なため改めて電子メールアドレスを記載することは不要です。
電子メールによる選挙運動は、政党や選挙の候補者は解禁されましたが一般の有権者は依然禁止されています。送信された選挙運動用電子メールを転送する行為も、その転送行為自体が新たな電子メールによる選挙運動となるため禁止です。
従来通り選挙運動は選挙期間中のみという点はネット選挙でも変わりません。
プロバイダ責任制限法も併せて改正されました
ネット選挙解禁に合わせてプロバイダ責任制限法が一部改正され、誹謗中傷・なりすましへの対策が取りやすくなっています。
プロバイダ責任制限法の改正点は以下の二つです。
プロバイダ責任制限法では、削除請求を受けたプロバイダの立場について、投稿者に削除に関する意見照会を行い7日以内に削除に応じない旨の回答がなかった場合には当該情報を削除したことによる責任を負わない(削除しても投稿者から損害賠償請求をされることはない)と規定されていました。
今回、ネット選挙の解禁に合わせて、政党や候補者等からの名誉毀損を理由とする削除請求に関しては、この意見照会期間を2日とし、2日以内に削除に同意しない旨の回答がなければ削除しても責任を負わないことになりました。
削除請求を受けたプロバイダは、投稿者に対する意見照会を行いその回答期限後に削除するか否かの判断をするのが一般的です。
このため従来は原則として削除までに7日以上が必要でしたが、今回の改正により選挙関連の情報に関しては、従来に比べかなりスピーディーに処理されることが期待できます。
選挙運動に関する電子メールアドレス等の表示義務に違反してなされた情報については、候補者等からの申し出があればプロバイダは削除しても責任を負わないことになりました。これは今回の改正で、情報の削除に関して新たに創設された免責の類型です。
誹謗中傷やなりすましへの対策を準備しましょう
プロバイダ責任制限法の改正により、誹謗中傷などの選挙妨害への対処は行いやすくなっています。しかし、極めて短期間である選挙運動期間中に適切な対処を行うためには事前準備が絶対に必要です。
選挙運動においてインターネット上での運動をどの程度重視するかはともかく、最低限以下のような備えは必要ではないでしょうか。
信頼できる情報と虚偽の情報が容易に判別できるように、ネット上での公式な発言の場を明らかにすべきでしょう。
インターネット上での選挙活動を行わない場合にも、なりすましを防止するため「ネット上での選挙活動は行わない」旨をネット上でアナウンスすることが有効です。
短期間の選挙運動期間中に有効な対処を行うためには、何よりも早期発見が必要です。
選挙運動期間中に観察対象とするサイトのリストアップなどを事前に行いましょう。
プロバイダ等の通信事業者で構成するテレコムサービス協会がプロバイダ責任制限法ガイドラインとして「『公職の候補者等に係る特例』に関する対応手引き」を策定しており、参考書式等も公開されています。
有事の際に早急に対処できるよう一読しておくことをお勧めいたします。
当事務所ではネットの監視から削除請求までネット選挙関連の法律業務に関してトータルで承る選挙期間に集中特化したサービスをご用意しております。ご興味のある方は遠慮なくお問い合わせください。