ネットリテラシー

そのSNSの使い方、大丈夫ですか?

  • 執筆者:弁護士船越雄一

 

子どもが映った画像や動画、安易に投稿してませんか?~子どもの肖像権、プライバシー権、名誉権などが害される可能性~

 

以前といってもだいぶ前ですが、子どもの画像を親が勝手にアップしてしまう場合の問題点について、記事をまとめました(「将来子どもに叱られる!?SNSの危険な利用方法 ~子どもの肖像権、プライバシー権~」)。

その後、どんどんインターネット上の状況も進み、親が勝手に画像等を投稿するというよりも、最近ではyoutube上で子どもと一緒に映った動画を投稿したり、子どもとともにユーチューバーのような活動をする方々も増えてきています。

それにより、親だけでなく子への誹謗中傷が生じる事例など、子どもを巻き込んだトラブルも増えているように感じています。
そこで、今一度、子どもが映った画像や動画に関する問題点を取りあげ、危険性を理解してもらい、可能な限り安全にSNSを利用していこうと思って頂ければ幸いです。

 

子どもの可愛い写真をアップして何が悪いの!?

親が子どもの写真をアップする理由には友人や祖父母などの関係者に対して成長を見せたい、成長記録を残しておきたい、この可愛さを共有したいなどいろいろな理由があるのかもしれません。
しかし、子どもも人権の享有主体であり、親とは別途独立の権利を持っている存在であるということを忘れないでほしいと思います。

以下、ありうる権利侵害を指摘します。

 

1 肖像権侵害の可能性

肖像権は、人がみだりに他人から撮影されたり、撮影されたものを公開等されることが無いよう他者に求めることができる権利です。

当然子どもにも肖像権は認められます。子どもが小さい頃は嫌がるようなこともないでしょうから問題は起きないと思いますが、子どもが大きくなった時、親に公開された自分の画像に関して恥ずかしく感じたり、他人に見られたくないと感じることもあると思います。

親子の問題であり、子どもが嫌がった時にすぐに削除すればそれ以上の問題になることもないとは思いますが、理論的には肖像権の問題が生じ、投稿記事の削除請求、場合によっては親に対する損害賠償請求というようなこともあり得ます。海外の事例では、親が投稿を削除しなかったため、実際に子が親を訴えた事例もありました。

また、親が管理するSNSなどで公開されている分にはあとで自分で削除できますので問題がないように思いますが、SNSアカウントへのログイン情報を失念してしまった場合、さらには公開した画像が第三者によって拡散されてしまったような場合には、自分で削除できなくなってしまいます。このような場合には、子どもの肖像権を侵害するものとして削除請求していくしかありません。

 

2 プライバシー権侵害の可能性

プライバシー権は、わかりやすく表現すれば、自己の私生活をみだりに公開されない権利です。

子どもの画像等を公開すると、前述の肖像権の問題も生じ得ますが、例えば背景に郵便物が写りこんでおり、住所が判明してしまったというような場合には、プライバシー権侵害という問題も生じうることになります。

インターネット上の情報を閲覧する人々にはいろんな方がいますので、プライバシー情報を悪用したり、住所がばれれば住居に立ち入られたり、様々嫌がらせ行為をされてしまう可能性もあります。
そうなれば子どもだけの問題でなく、家族全体にとって非常に危険な状況となります。

 

3 名誉権侵害、名誉感情侵害(侮辱)の可能性

子どもの写真を公開することですぐに思いつくこととるれば前記肖像権とプライバシー権の問題ですが、子どもの社会的評価を低下させるような書き込みがなされたり(名誉権侵害)、子どもを侮辱するような書き込みがなされてしまう(名誉感情侵害)ことも考えられます。

例えば、子ども可愛さに子どもの画像を沢山投稿した際、その子どもの容姿を見た人が、子どもの容姿を侮辱するような言葉を投稿したり、投稿された画像を別の匿名掲示板などに転載してそこで侮辱文言を投稿したりすることも考えられます。

世の中には様々な考えを持った人がおり、必ずしも好意的に投稿内容を受け取ってくれる訳でもありません。特に、ユーチューバーのような活動をしている子どもの場合、良くも悪くも批判の対象とされやすいため、被害にあうリスクは高まります。

子どもに対する誹謗中傷がいろいろな場所で投稿されてしまえば、それらの投稿を削除請求等行うのも大変な作業となり、経済的にも相当な負担を受けることとなります。

 

子どもだけでなく親も被害者に!?

上記では子どもの権利侵害という観点からまとめましたが、子どもの画像を投稿すること自体、快く思っていない方もおられます。

そのような方が子どもの画像等を投稿している親を見たときに、その親に向けて誹謗中傷する、親の名前を探し当て晒す、などのリスクもあります。

しかも、このような誹謗中傷にあってしまう場合、画像を投稿したSNS等ではなく、他の匿名掲示板上で晒されているケースが多いように思われ、かなり拡散してしまうケースも考えられます。
そうなってしまいますと、拡散した誹謗中傷を削除しきることすら難しくなってしまい、親自身も大変な目に合ってしまうでしょう。

 

子どものことも、自分やその他の家族のことも考えてインターネットを利用しましょう

子どもの画像を親が勝手に投稿することによって生じうる法的問題をまとめましたが、投稿は簡単にできるにもかかわらず、問題が生じてしまうと投稿の削除をするにも大変な労力を要し、完全に消し去ることができるのかもわからない状況となりかねない、ということをご理解いただければ幸いです。

子どもの画像を友人等に見てもらいたい、どうしてもSNS等に投稿したいと考えるのであれば、せめて公開範囲を限定するなど被害を最小限に抑えられるようによく考えて投稿してほしいと思います。

もっとも、公開範囲を限定しても友人の設定などの問題で拡散するリスクはどうしても生じてしまいます。

私個人の考えとしては、どんなに可愛くても、記録を残しておきたくても、インターネット上の公開の場に大切な子どもの画像等を投稿することは避けた方が良いと考えております。

万が一、子どもや親である自分が被害にあってしまったというような場合には、一度弊所にご相談いただければ幸いです。最善の対応策を検討させていただきます。

 

 

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