弁護士 椿 良和
ここで、AIとは、人工知能(Artificial intelligence)、つまり、人間の知能をコンピュータなどの人工的な手段で実現させたものをいいます。
昔、ドラクエ4をやったことがある方であれば、AI機能が初めて登場して興奮したことと思います(ガンガンいこうぜ!懐かしいです。結局、AI機能を使いこなせませんでしたが・・・。)。
また、チェス、将棋、囲碁などで人間がAIと対戦しているところ、1997年にAIが当時のチェス世界王者を破り、2017年に将棋のプロ棋士がAIと対戦する電王戦が行われたがAIが完勝し、2019年にAIが世界最強と言われていた囲碁棋士を破るなど、AIが人間を凌駕しており、AIが人間の頭脳を超える日も近い?むしろ超えている?ということで、AIのポテンシャルに注目が集まっています。
このようなAIを用いて、音楽やダンスでも振付けなどを創作することも可能です。
それでは、AIで音楽や振付けなどを創作した場合、①当該創作物が著作物に該当し著作権が発生するのでしょうか、②著作権が発生する場合、誰に帰属するのでしょうか?
[pullquote-left]⑴ 著作物として著作権が発生するか?(①)[/pullquote-left]
「著作物」とは、「思想又は感情」を創作的に表現したものである必要がありますが、以下、AIの用い方によって場合分けをして検討します。
ア AIによる創作の場合
現時点ではAIが自分の意思で創作活動をすることは考えられないですが、例えば、人間により抽象的に創作の指示をした場合、AIには、「思想又は感情」がないと思われますので、著作物には当たらないと思われます。
ただし、AI創作物が著作物に当たらないとされた場合、AI創作物を第三者が自由に使えてしまうという問題が生じます。
イ AIを道具として利用した創作
人間が創作意図や創作的寄与をもって、AIを道具として創作物を作った場合、「思想又は感情」による創作物と認められる余地があり、当該創作物に、著作権法上の創作性が認められれば、著作物に当たると思われます。
[pullquote-left]⑵ 著作権が発生する場合誰に帰属するか?(②)[/pullquote-left]
ア AIによる創作の場合
この場合、AIプログラムの作成過程において当事者間で合意がない限り、分析的に考えれば、当該AIプログラムの開発者や学習用データの提供者などで創作的寄与をした実態のある者に著作権が帰属すると思われます。
ただし、AI創作物が著作物に該当するとして著作権が発生した場合、著作物が大量に創作され、一部の者が著作権を独占し、その他の者の創作活動に支障が生じるおそれがあります。
イ AIを道具として利用した創作
この場合、AIを道具として利用して創作活動を行った者に著作権が帰属するものと思われます。
ただし、AIによる創作物が著作物に該当し得る場合であれば、共同して創作する意思の有無や創作の態様により、当該AIプログラムの開発者などや創作活動を行った者の共同著作物(著作権法2条1項12号)又は創作活動を行った者の二次的著作物(同法2条1項11号、11条)と考える余地があると思われます。
[pullquote-left]⑶ 参考資料[/pullquote-left]
以上については、「AIによって生み出される創作物の取扱い(討議用)」(平成28年1月、内閣官房、知的財産戦略推進事務局)の資料を参考にしているところ、当該資料に詳細な説明がなされていますので、ご参照下さい。
(URL)
以 上