EU司法裁判所判決や東京地裁がGoogleに検索結果の削除を命じた決定と関係し大きく報道された『忘れられる権利』について、昨年末に共同通信社より取材がありコメントが各地の新聞に掲載されました。
忘れられる権利とは、「個人が、個人情報などを収集した企業等にその消去を求めることができる権利」とされています。
「EUデータ保護規則案」に「rights to be forgotten」として盛り込まれ、その後の正式なデータ保護規則では「right to erase」(日本語に訳すとすれば「削除請求権」でしょうか)と表現に変更がありつつも、同様の内容が規定されました。日本においては特に 『忘れられる権利』というものがあるわけではありませんが、現代のネット社会において我々が抱える漠然とした不安感に後押しされ注目を受けています。
従来の社会では、マスコミ報道などがあったとしても時間の経過により徐々にその情報にアクセスすることは困難となりました。しかし、現在のネット社会では検索エンジンの発達もあり、時が経過しても情報にアクセスすることに特段の困難性はありません。情報に対する時間軸の影響が希薄化し、現在の情報も過去の情報もすべてが並列化され始めています。
現在『忘れられる権利』は、主に「検索エンジンに対する情報の削除(検索結果からの非表示)請求」という文脈で語られています。本来は対検索エンジンに限られない概念ですが、上記のような情報の並列化による弊害という観点を考えると、主に検索エンジンに対する関係で語られるのはある意味では実態に即しているといえるのでしょう。
なお、わが国では『忘れられる権利』という概念が裁判上で用いられることはなく、従来の名誉毀損やプライバシー権による削除請求にて、同様の問題の解決を図っています。