知的財産

美術品のコピー品を売ってもいいの?

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  • 執筆者:弁護士椿良和
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昨日は節分でしたが,皆さんいかがでしたか?恵方巻は恵方を向いて無言で食べるとよいとか。黙食向きですね。 

こんにちは、弁護士の椿です。

先日、美術品の複製物の販売についてトークする場面がありました。  

せんせ~い、この前、博物館に行ったんですよ~。平安時代の書が展示してあって…昔の人って、字がキレイですよね~。あまりに字がきれいだから、写真にとってマグカップとか作ってみようかなぁ。ネットで売ったら儲かりそうじゃないですか~?なんか問題あります?

そもそも博物館は撮影OKなの?
それに、美術品の写真を商品に利用する場合は、その美術品の所有者との間で紛争に巻き込まれる可能性があるから注意して下さいね。法的にどうなるかは別として所有者から訴えられた事例もありますよ。

えぇ!?ほんとにそうなんですか?
著作権はもう消滅してるってネットに書いてありましたよ

ということで、今回は、著作物としての保護期間が経過している美術品について、複製物を販売する場合(この場合は平安時代の書)における法的問題について、本当に著作権がないからいいのかという観点から検討しましょう。

著作権の保護期間

まず、美術品には著作権があり、これを著作権者に無断で複製することは著作権の侵害(違法)になります。

もっとも、著作権は永遠に有効ではなく、保護期間(有効期間)があり、公表後70年で失効するのが原則です。その意味で歴史的な美術品については現在は著作権は消滅しており、著作権法的には誰もが自由に利用できます。

顔真卿自書建中告身帖事件

実際に、著作権の保護期間が満了しているのにも関わらず紛争になった事件がありました。

顔真卿自書建中告身帖事件(がんしんけいじしょけんちゅうこくしんちょう事件 最高裁第二小法廷昭和59年1月20日判決)です。

中国の唐の時代の書家「顔真卿」が独特の筆法で直筆した書である「自書建中告身帖(じしょこくしんちょう)」(以下「当該書」といいます。)について、出版社が当該書を複製(適法に取得した写真乾板を用いて作成)し、複製物(出版物)を販売しました。

そうしたところ、当該書の原作品の所有者であった博物館が、当該複製及び販売行為が原作品の所有権を侵害するとして、出版社に対し販売の差止めと廃棄を求めたのがこの事件です。

博物館は、書という美術の著作物の原作品には、「有体物の側面」と「無体物の側面」があり、所有権者はこの両方を支配しているのであるから、「無体物の面」を利用する行為は、原作品の所有権の侵害であると主張したのです。。。

無体物の側面は所有権に含まれる?

この博物館側の主張に対し、最高裁判所は、「美術の著作物の原作品は、それ自体有体物であるが、同時に無体物である美術の著作物を体現しているもの」であり美術には有体物と無体物の両側面があるとしつつ、美術品と言う「物」の所有権がどこまで及ぶのかについて検討しました。

そして、結論として、所有権は有体物を対象とする権利であるため、「美術の著作物の原作品に対する所有権」は、その有体物の面を支配する権利にとどまるとしています。

美術の無体物の面を支配する権利は、あくまで著作権法により保護されるものであり、「著作物の保護期間内に限り、ひとり著作権者がこれを専有する」、つまり所有権者にはないとしたのです。

所有権は、有体物をその客体とする権利であり(民法206条、同法85条)、著作物に対する価値やパブリシティ価値のような無体物(無体財産権)を権利の内容として含むものではないため、無体物としての側面については所有権では保護されないというのが最高裁判所の結論です。

著作権の消滅後は自由?

最高裁判所は、美術の著作物には「著作物の保護期間内においては、所有権と著作権とは同時的に併存」しますが、一方で、「著作権の消滅後は……著作物は公有(パブリック・ドメイン)に帰し、何人も、著作者の人格的利益を害しない限り、自由にこれを利用しうる」としています。

しかし、「著作権の消滅後に第三者が有体物としての美術の著作物の原作品に対する排他的支配権能をおかすことなく原作品の著作物の面を利用したとしても、右行為は、原作品の所有権を侵害するものではない」として、場合によっては所有権侵害になりうる場合があるという一応の留保が付けられています。

まとめ

このように、著作権の保護期間が経過している場合は、原則として問題がないといえるでしょう。

しかし、美術品の有体物としての側面を害する態様と言えるかの問題がありますので一応注意は必要です。

撮影禁止の場所で勝手に撮影することは問題になるかも


また、前回も触れましたが、商標権など所有権以外の権利がある場合や、顧客吸引力のある物の複製物を商品として販売する場合には、前回と同様に不法行為の成否の検討が別途必要になる可能性がありますのでご注意下さい。

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