SNS上での発言をめぐって「炎上」をする事例が後を絶ちません。
炎上は企業の公式アカウントでの発信でも起こりますが、社員や役員が私的に行っているSNSの炎上に会社が巻き込まれるといったこともよく見かけます。
このようなトラブルに巻き込まれないため、またトラブル発生時の対処を容易にするため、SNSやインターネットでの情報発信の在り方について組織としての方向性を定め、これを組織全体で共有することが必要です。
この方向性を定めた規定は、「SNSポリシー」、「SNSガイドライン」、「インターネット利用ポリシー」などと呼ばれており、組織の正式なルールとして制定する企業も年々増えています。
弊所でも、社内規則の一つとしてSNSガイドラインの策定をお勧めしておりますが、定めるべき内容のポイントや策定後の活用方法などご紹介いたします。
記事の最後でSNSガイドラインひな形をダウンロードできるようにしておきました。会社の状況に応じてご自由に修正してご利用ください。
SNSガイドライン策定の必要性
ガイドラインには2種類ある
SNSガイドラインは大きく分けて、自社の公式アカウントなど業務として運用するSNSについてのふるまいを定めるものと、各社員が業務外で私的に利用するSNSについて定めるもの、の2種類があります。
私的なSNS利用に関しては今やどの会社でも発生しますので、業務としてはSNSを活用していない場合でも、組織としての考え方をガイドラインとして策定しておくことは重要で、安心につながります。
ガイドライン策定の効果
ガイドラインの策定には二つのメリットがあります。
リテラシーの向上・炎上の回避
ガイドラインでは、SNSやインターネットの特性を踏まえ、避けるべきふるまい、他人の権利を侵害し問題となる行為などを明記してゆくことになります。
私が担当するリテラシー研修では、毎回、直近の実際の炎上事例を取り上げて問題点のご紹介などをしておりますが、事後的に検討すると炎上の原因と回避方法というのは思いのほか容易に指摘できます。
当たり前のことが当たり前にできていなかった結果、炎上に至ってしまっている例が非常に多く、ガイドラインを作成しごく当たり前のことも含めてインターネットやSNS利用上の注意点を再確認することは社員のリテラシーを向上させ炎上の回避につながります。
問題発生時の対応根拠を作る
とはいえ、ガイドラインを策定したとしても炎上に巻き込まれることを100%防ぐことは不可能です。
ガイドラインを正しく読めていない、ガイドラインは知っていても問題回避能力が低いなどの問題から炎上につながることもあります。
企業にとってSNSガイドラインは、むしろ問題が発生したときの対応に効果を発揮します。
そもそも、私的なSNS利用というのは会社の活動の外で行われるものであり、本来であれば会社とは無関係です。
しかし、炎上が発生した場合、過去の発信などから当該SNSアカウントの身元特定が行われ、勤務先なども晒される流れになってきます。
そして、場合によっては勤務先に対する問い合わせやクレーム(電話でクレームを入れることを「電凸」と言ったりします)に発展することも珍しくありません。
ここまで来ますと、会社の業務にも影響が生じますので何らかの対応が求められますが、会社として社員の私的な領域でのトラブルに踏み込みすぎるのは別の問題にもなりかねません。
よって、私的なSNS利用であっても会社と無関係ではいられないこと、何かしらの問題が発生した場合には業務外のSNSであっても会社が問題解決のために関与することもあることなどをガイドラインとして定め、従業員のSNS上の問題に対応してゆく法的根拠を用意しておくことが会社としては重要となります。
ガイドライン策定のポイント
主に、社員の私的なSNS利用に関するルールを定めるという狙いでSNSガイドラインを策定する場合のポイントを説明します。
単なる指針ではなく、就業規則の体系に組み入れること
さて、SNSガイドラインを策定する場合、問題発生時の法的根拠として適切に機能させるためには就業規則の体系に組み入れることが必要になってきます。
具体的には就業規則上の服務規則にてSNSガイドラインについても遵守するよう明記し、違反した場合には懲戒事由にもなり得ることを記載するのが簡便です。
【就業規則への記載例】
第◆条(信用失墜行為の禁止)
〇 ~略~
〇 社員は、ソーシャル・ネットワーキング・サービス等のインターネット上での情報発信媒体を利用し、会社の業務と無関係に個人として意見を発信する場合であっても、不用意・不適切な発言により会社もしくは関連会社及びこれらの関係者の信用を傷つけることがないよう、会社が別途定める「SNS利用ガイドライン」を順守しなければならない。
ガイドラインに定めるべき内容
ガイドラインの内容は企業ごとの状況に応じて変わってきますが、定めておくとよい内容としては次のようなものが挙げられます。
目的および基本方針
信用を維持する、トラブルに巻き込まれないなどが目的となりますが、容易に全世界に情報が拡散することなどインターネットの特性などネットリテラシーの基礎知識を前文で明記する例もあります。
適用の範囲
役員、一般社員、アルバイトなど全従業員に適用され、また業務外の私的な活動でも会社に影響を及ぼすことがあるため業務外の情報発信についても注意する必要があることなどを記載します。
また、秘密の保持など一部の内容については退職後も遵守しなければならないことも明記する方が安全です。
所属の開示に関する考え方
社名を出してSNSを利用することの可否、社名を明らかにする場合の情報発信の注意などを定めておきましょう。
内部情報や業務に関連した情報発信のルール
内部情報の公表は禁止行為として定める例が多いと思います。
また、業務に関連する情報については発信を認める場合でも誤解を招くことがないようにしなければならないとしたり、会社の許可なく発信してはならないと定める例があります。
その他の全体的な禁止行為
誹謗中傷や著作権侵害など第三者の権利を侵害する情報発信や、権利侵害まで至らなくとも会社や取引先の業務上悪影響を及ぼすような情報発信を禁止する例が一般的です。
なお、表現の自由との兼ね合いから、権利侵害に至らない内容まで実際に禁止する拘束力が認められるかは議論がありますが、少なくとも会社としては禁止していることを明記することは、問題発生時に懲戒処分等を検討する際に重要になってきます。
問題発生時の対応(報告など)
炎上発生時などに会社が情報を得られるよう、一定の会社の業務に影響を与えかねない問題については報告と相談をすることなどを記載します。
懲戒
問題発生時の対応のためにガイドライン違反が懲戒の対象になることを明記しておくことが無難です。
作って終わりはNG
インターネット利用に関する体系的な知見を学ぶ場は少なく、会社の中にリテラシーが高くない社員は必ず存在します。
また、若手が問題を起こしがちというイメージがあるかもしれませんが、実際は老若男女問わずSNSでの炎上を発生させています。むしろ、役員や役職者の方が問題を起こした場合に会社の業務に与える影響は大きく注意が必要です。
弊所では、企業や公的機関において、多数のリテラシー研修を実施していますので、ご興味があればご相談ください。
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